初先発。僕はようやくチームの一員になれた――
お笑い芸人・杉浦双亮の挑戦記〈25〉
4回2/3をノーヒット、無失点。快投に誰もが感嘆した、そのときの思い――。
■試合後に湧いてきた安堵の気持ち
その後、タカちゃん(高原和弘)が抑えてくれ、試合は3対1の勝利。4回2/3を投げた僕は被安打0、失点0、4四球という成績で初めての「夢のマウンド」を終えた。マウンドを降りたときは悔しかった気持ちも、試合が終わり、チームが勝ったことでポジティブなものに変わりつつあった。あと一人で降板してしまったところはこれからの課題となったけれど、それはもっと練習をして埋めていくしかない。一方で、「ああ、これで愛媛マンダリンパイレーツの本当の一員になれたかもしれない」と思えるようになった。
今までは全くチームの役に立っていなかった。ベンチで声を出すことはできても、試合で貢献できたことはなかった。今回は、9連戦の8戦目で、かつ首位攻防戦だった。負ければ首位陥落、投手を少しでも休めさせたい試合で、曲がりなりにも勝利に貢献できた、という実感があった。
それに、これまでネットを中心に聞いた批判的な声に対し、少しはポジティブな姿を見せられたのではないか、という思いがあった。「客寄せパンダ」「実力がない」……はっきり言えば僕自身、そんなことは百も承知だ。それでもできるところを見せたいと思ってここまで一生懸命やってきた。なにより、例え僕がそうであったとしても、その僕がいるせいで愛媛マンダリンパイレーツでプレーするチームメイトや、四国アイランドリーグの選手たちまでもが嫌な気持ちになることを悔しく思っていた。
そうした声を納得させるには結果しかなかった。だから、結果を出せたことにホッとしたのだ。
翌日、その日の対戦相手だった徳島インディゴソックスの中島輝士監督が僕のところへわざわざ来てくれた。
「バスの中でチームみんなが、速報を見ながらすごい。ノーヒットだ、これはすごいって言ってたよ。5回はどうしたの? (握力が…)そうか、それは仕方ないか。でもこうやってその歳でもできるっていうことを証明してくれた。若い選手はもっとできるんだって思うはずだし、リーグが注目してもらえる。ありがとう」
とてもうれしい言葉だった。
次のマウンドはまだ決まっていない。もっとチームに貢献したい、そう思っている。ようやく、チームメイトになれたのだから、もっともっと上を目指して連覇に貢献したい。
――「マンダリンパイレーツの一員であり芸人」である僕がマウンドに立つ日を僕も心待ちにしているし、そのための努力をしていきたい。